横溝正史ミステリ大賞を受賞しました

最近ミステリ小説を書いていまして、このたびKADOKAWA様の第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞いたしました。木逸裕という名義の『虹になるのを待て』という作品です。

www.kadokawa.co.jp
www.jiji.com

執筆活動を支えてくれた妻と、応援をしてくれた家族・友人の皆様、拙作を選んでいただいた選考委員の皆様、拙作を本選に上げていただいた審査員の皆様、小説の手ほどきをしていただいた鈴木輝一郎小説講座の鈴木輝一郎先生、ぼくの心を揺さぶり、彩ってくれた様々なアートやエンターテインメント、そのすべてに感謝いたします。本当にありがとうございました。詳細はまた告知させてくださいませ。

ぼくの愛する日本映画(ここ5年)

日本映画を取り巻くここ2、3日の大騒ぎに心底うんざりしているので、この5年で面白かった日本映画をあげてすっきりすることにする。誰かに反論したいわけでも、何かを証明したいわけでもない。順不同。

海街diary

海街diary DVDスタンダード・エディション

海街diary DVDスタンダード・エディション

去年のマイベスト。微細な心理描写、響きあう群像劇、ドラマそのものではなく、ドラマが起きるかもしれないという予感で引っ張る高度なストーリーテリング。役者の輝きを引き出す是枝マジック。334分くらい見たいと思っていたところ128分で終わってしまった。

百日紅

百日紅~Miss HOKUSAI~ [Blu-ray]

百日紅~Miss HOKUSAI~ [Blu-ray]

去年のベストアニメ。こんな作品が劇場で公開されていることが、日本映画の芳醇さの証左であると思う。アンチカタルシス的なドラマ構成、キャッチーでない絵柄は好みが別れるところだと思うけども、でっかいスクリーンで見れて眼福眼福、ぼくの細胞が喜んでいた。

凶悪

凶悪

凶悪

実際にあった「上申書殺人事件」という凶悪殺人事件を、リリー・フランキーとピエール瀧という傑物ふたりを並べて映画化するというすごい企画。凶悪殺人鬼ふたりに相対するのは、山田孝之! ものすごい大胆な三幕構成をとっていて、創作的な観点からも興味深い。

恋の渦

恋の渦 [DVD]

恋の渦 [DVD]

『モテキ』『バクマン』の大根監督が、超低予算で作ったヤンキー群像劇。金などなくとも、アイデアとガッツでこれほど芳醇な映画を作れるのだということで、創作というのは不思議なものです。大根監督はこういうものも作れるし、予算のついたプロジェクトも回せるしと走攻守揃ってる感ある。

渾身

隠岐諸島に伝わる古典相撲を軸に、細密な人間ドラマが描かれていく。古典相撲の独特の世界、隠岐諸島の美しい自然、忘れがたい余韻を残す作品。この映画がなかったらこの世界のことは多分死ぬまで知らなかった。創作とは異世界への窓。

舟を編む

舟を編む

舟を編む

石井裕也の名前を決定的なものにした一本。辞書を作るという地味な話を丹念に描いていく。主人公ふたりがかなり浮世離れしたキャラクターなのだが、松田龍平、宮崎あおいのふたりが素晴らしい演技で原作に答えている。脇の人間ドラマに至るまで作りこまれていて、実に様々な切り口で味わえる作品。

地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い スタンダードエディション [DVD]

地獄でなぜ悪い スタンダードエディション [DVD]

園子温の作品では、いまのところこれが一番好き。何もかもが過剰・過剰・過剰。にもかかわらずものすごく地に足の着いた作品でもあって、こんな作品が作れるのは世界にも園子温しかいないと思う。

かぐや姫の物語

かぐや姫の物語 [DVD]

かぐや姫の物語 [DVD]

制作費50億を投入して作られたジブリ渾身の一作。高畑勲のビジョンがようやく銀幕の上で結実した作品と言えるのかも。力強く美しい人間賛歌であって、胸を締め付ける悲劇であって、見ている最中感情がぐわんぐわんと揺さぶられて数日立ち直れなかった。それ以来、未だに見返せていない。

へんげ

へんげ [DVD]

へんげ [DVD]

ある日起きたら身体の一部が……というカフカ『変身』の導入から、あれよあれよとエスカレートしていく実験的な傑作。話をとことんエスカレートさせていくと、ジャンルの枠を壊してしまうという好例。

サイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者

サイタマノラッパーシリーズの完結編。脇役だったマイティを主人公に、地獄のような日々を描いていく。創作を志すものが味わう屈辱と地獄。そして、闇の奥で明滅する、あまりにも美しい光。

グスコーブドリの伝記

グスコーブドリの伝記 [DVD]

グスコーブドリの伝記 [DVD]

宮沢賢治作品の映像化として、おそらく最も成功したであろう杉井ギサブロー監督の『銀河鉄道の夜』以来、宮沢・杉井タッグが取り組んだ第二作。ドラッギーな幻想味が全編から溢れており、非常に印象深い。ラストの唐突さも原作を再現していて、この辺の思い切りのよさは凄い。

ツレがうつになりまして。

ツレがうつになりまして。

ツレがうつになりまして。

うつ病の夫、それを支える妻を描いた人間ドラマ。いまや顔面相撲の大横綱として活躍している堺雅人さんですが、彼の演技の幅が本当に広いのだということを認識できる。いまでこそうつ病への認知も進んできたけども、これが公開された4年前には、うつ病への書きかたが非常に誠実だなあなどと思った。

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

おそらくは2010年代のベスト邦画でアンケートを取ったら、これが1位になるでしょうね。本命中の本命、大傑作。ローエングリンのシーンではたっぷり泣いた。あらゆる要素、あらゆるアンサンブルがガッチリと決まって、今後の学園群像劇を作るに際してはこれが当面の間のメルクマールになるはず。

アウトレイジ・ビヨンド

アウトレイジ ビヨンド [DVD]

アウトレイジ ビヨンド [DVD]

仕事中にBGMとして映画を流していまして、これは冗談抜きで100回は見たと思う。冒頭からすべての台詞を嫁さんの前で詠唱するというプレイを行っていたら嫌がられた。作家性に依拠していた北野武が、その技術に依拠して作品を作るようになったという点でもエポックな作品。塩見三省が輝いている。

黄金を抱いて飛べ

髙村薫 × 井筒和幸という、ぼく的には夢のようなコンビによる作品。銀行強盗のハウツーを徹底的にリアルに描いていて、ディティールの作りこみが非常に素晴らしい。世間を仰天させた傑作『ヒーローショー』と並んで、近年の井筒作品の代表作だと思う。

その街のこども

これ見たの、震災の1ヶ月前なんだよな……。阪神大震災をめぐり、一組の男女の一晩を描いた、ささやかなロードムービー。人間が抱えるにはあまりにも大きすぎる悲劇に、正面から向かい合う、あるいは向かい合おうとする小さな人間の物語。森山未來と佐藤江梨子のふたりがとてもいい。

さんかく

さんかく 特別版(2枚組) [DVD]

さんかく 特別版(2枚組) [DVD]

駄目男、その彼女(若干メンヘラ気味)、彼女の妹(天然悪女)の三人をめぐる恋愛模様の物語。MVPは高岡蒼甫で、モテ期が到来してるじゃんと勘違いしながら痛い行動を取り続ける様は、なんだか自分の駄目なところをつきつけられている感じがした。

監督失格

監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

監督失格 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

早逝したAV女優、林由美香の死を巡る物語。最愛のミューズの死に立ち会ってしまった作家の混乱、迷い、苦悩がすべて作品にぶち込まれている。それを振り払うには、ここまでしないといけないのかと慄然とするクライマックス。映画館で観てしばらく立てなかった。


まだたくさんありますし、見れていない映画はその何倍もありますが、とりあえずこんなところで。今年も面白い映画に出会えますように!

Miitomoの「承認されない」コミュニケーション

任天堂がスマホアプリ市場に投入した第一弾「Miitomo」が面白い。週末はずっとこれをやっていて、私のネット方面の友達もかなりやりこんでいるようだった。

一言で言えばアバターを使ったSNS。SNSの新規立ち上げというと爆死というか、朝に嗅ぐナパームの香りしかしないのだが、「Miitomo」には新鮮な驚きと面白さを感じている。かなりいままでの常識に依らない設計がなされていると思う。

まず、誰かとフレンドになるための敷居が非常に高い。フレンドになるための方法は三つ。

  • 実際に会って、スマホを付きあわせてフレンドになる。
  • Facebookで繋がってる友達と、フレンドになる。
  • Twitterで繋がってる友達(相互フォローしている人)と、フレンドになる。

つまり、一方的に誰かをフォローしてタイムラインを見るような使いかたはできない。フレンドのフレンドであっても、上記の条件に当てはまらない人にはフレンド申請すらできないので、かなり徹底している。

また、フレンドの投稿を見るために、キャンディというアイテムを使わなければいけないあたりも面白い。普通SNSというのは、誰かとつながったら、その誰かが過去に投稿したものをすべて網羅的に追うことができる*1。Miitomoではそれができないのだ。フレンドの投稿をすべて読みたいのなら、キャンディを入手して使わなければいけない。またキャンディは入手しづらく、私の知る限りでは公式からプレゼントされたり、ミニゲームをこなして入手しないといけないので、全フレンドの全発言を追いかけるというのはほぼ不可能なのではないか。この辺りもかなり常識外れの設計がされている。

閑話休題。通常、SNSというものは、以下のようなサイクルで周る。

  • 投稿をする
  • 承認をされる

TwitterにせよFacebookにせよ、SNSにおいてユーザーは承認を求めて投稿を行う。それが場の文脈に沿っていて、かつ有用であるならば、承認が行われる*2。SNSというのはこの「投稿と承認」の観覧車にユーザーを乗せてぐるぐる回す仕組みであって、それがいままでの常識だったのだが、「Miitomo」の設計思想はここから外れている。

上記したように、まず他人の投稿を読むことが難しい。書き手にとっては、有用な投稿をしても、たくさんの投稿をしても、それがフレンドに届くかどうか判らないのだ。LINEとは正反対の設計で、LINEでは投稿したものが誰にどこまで読まれているかを細かく把握することができるが、「Miitomo」ではそれは全くできない。誰に何を読まれているのか、書き手にもよく判らないのだ。

だがやってみて判るのは、これってすごい楽だということだ。自分の投稿に「いいね」がつかないのは、自分の投稿がつまらないからではない。そもそものシステム設計のせいで、投稿がフレンドに届いていない可能性も高いからだ。

プレイヤーはつまらないことでも何でも、自由に言っていい。承認されないからといって、落ち込む必要がないからだ。大量に投稿してもいい。それでタイムラインを汚す心配もないからだ。プレイヤーは気が向いたときに気が向いたように投稿すればいいし、気が向いたときにフレンドの発言を読んでコミュニケーションを図ればいい。もちろん図らなくてもいい。システムとしては不自由なのだが、空気として自由なのである。

通常、このようなSNSをいちから立ち上げても、まず上手く行かないだろう。なんだこれ? 不自由だしわけ判らんクソシステム乙となって終わると思う。一定量のアクティブユーザーがいないと回らない仕組みだし、アクティブユーザーを一定量つけるというのはものすごい労力がかかる。そこは任天堂ブランド、三十年以上にわたって培ってきた「任天堂のやることならとりあえずやってみよう」というオーディエンスの信頼感をベースに、一気にアクティブユーザーをつけて、通常回るはずのない観覧車をぐるぐると回しはじめている。SNSとは栄枯盛衰の激しい分野なのでどこまで持つか判らないけど、こういうものはなかなか作ろうと思って作れるものではないので、なるべく長く続いてほしいなと思う次第。私は好きです、「Miitomo」。

蛇足

二点ばかりおまけを。

Miiフォトがよくできている。私はデザインのセンスもないし、そもそも写真に文字を入れて加工する方法すら判らない人間なのだが、背景をネットで拾ってきて、そこにMiiフレンドのアバターを差し込むだけで画像が作れる。楽しい。写真はHAL9000との死闘を繰り広げる私の友人。iPhone一台だけでこんなものが作れるのだから、すごい時代だ(デザイナーの人ならば何をいまさらという感じかもしれないが……)。

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Miiや、Miiがしゃべる音声合成のソフトもよくできている。Wiiが発売されてから9年以上、ここまで蓄積された膨大なノウハウがこのMiiというアバターに突っ込まれているのだろうが、その辺は私は詳しくないので、詳しい人に解説してもらいたいところ。

*1:Twitterは例外で、3200件までしか追えないという制限がある

*2:文脈に露悪的に逆らったり、ビジネスとして承認よりも利潤を求めて投稿行動をする人もいるが、それは例外