Miitomoの「承認されない」コミュニケーション

任天堂がスマホアプリ市場に投入した第一弾「Miitomo」が面白い。週末はずっとこれをやっていて、私のネット方面の友達もかなりやりこんでいるようだった。

一言で言えばアバターを使ったSNS。SNSの新規立ち上げというと爆死というか、朝に嗅ぐナパームの香りしかしないのだが、「Miitomo」には新鮮な驚きと面白さを感じている。かなりいままでの常識に依らない設計がなされていると思う。

まず、誰かとフレンドになるための敷居が非常に高い。フレンドになるための方法は三つ。

  • 実際に会って、スマホを付きあわせてフレンドになる。
  • Facebookで繋がってる友達と、フレンドになる。
  • Twitterで繋がってる友達(相互フォローしている人)と、フレンドになる。

つまり、一方的に誰かをフォローしてタイムラインを見るような使いかたはできない。フレンドのフレンドであっても、上記の条件に当てはまらない人にはフレンド申請すらできないので、かなり徹底している。

また、フレンドの投稿を見るために、キャンディというアイテムを使わなければいけないあたりも面白い。普通SNSというのは、誰かとつながったら、その誰かが過去に投稿したものをすべて網羅的に追うことができる*1。Miitomoではそれができないのだ。フレンドの投稿をすべて読みたいのなら、キャンディを入手して使わなければいけない。またキャンディは入手しづらく、私の知る限りでは公式からプレゼントされたり、ミニゲームをこなして入手しないといけないので、全フレンドの全発言を追いかけるというのはほぼ不可能なのではないか。この辺りもかなり常識外れの設計がされている。

閑話休題。通常、SNSというものは、以下のようなサイクルで周る。

  • 投稿をする
  • 承認をされる

TwitterにせよFacebookにせよ、SNSにおいてユーザーは承認を求めて投稿を行う。それが場の文脈に沿っていて、かつ有用であるならば、承認が行われる*2。SNSというのはこの「投稿と承認」の観覧車にユーザーを乗せてぐるぐる回す仕組みであって、それがいままでの常識だったのだが、「Miitomo」の設計思想はここから外れている。

上記したように、まず他人の投稿を読むことが難しい。書き手にとっては、有用な投稿をしても、たくさんの投稿をしても、それがフレンドに届くかどうか判らないのだ。LINEとは正反対の設計で、LINEでは投稿したものが誰にどこまで読まれているかを細かく把握することができるが、「Miitomo」ではそれは全くできない。誰に何を読まれているのか、書き手にもよく判らないのだ。

だがやってみて判るのは、これってすごい楽だということだ。自分の投稿に「いいね」がつかないのは、自分の投稿がつまらないからではない。そもそものシステム設計のせいで、投稿がフレンドに届いていない可能性も高いからだ。

プレイヤーはつまらないことでも何でも、自由に言っていい。承認されないからといって、落ち込む必要がないからだ。大量に投稿してもいい。それでタイムラインを汚す心配もないからだ。プレイヤーは気が向いたときに気が向いたように投稿すればいいし、気が向いたときにフレンドの発言を読んでコミュニケーションを図ればいい。もちろん図らなくてもいい。システムとしては不自由なのだが、空気として自由なのである。

通常、このようなSNSをいちから立ち上げても、まず上手く行かないだろう。なんだこれ? 不自由だしわけ判らんクソシステム乙となって終わると思う。一定量のアクティブユーザーがいないと回らない仕組みだし、アクティブユーザーを一定量つけるというのはものすごい労力がかかる。そこは任天堂ブランド、三十年以上にわたって培ってきた「任天堂のやることならとりあえずやってみよう」というオーディエンスの信頼感をベースに、一気にアクティブユーザーをつけて、通常回るはずのない観覧車をぐるぐると回しはじめている。SNSとは栄枯盛衰の激しい分野なのでどこまで持つか判らないけど、こういうものはなかなか作ろうと思って作れるものではないので、なるべく長く続いてほしいなと思う次第。私は好きです、「Miitomo」。

蛇足

二点ばかりおまけを。

Miiフォトがよくできている。私はデザインのセンスもないし、そもそも写真に文字を入れて加工する方法すら判らない人間なのだが、背景をネットで拾ってきて、そこにMiiフレンドのアバターを差し込むだけで画像が作れる。楽しい。写真はHAL9000との死闘を繰り広げる私の友人。iPhone一台だけでこんなものが作れるのだから、すごい時代だ(デザイナーの人ならば何をいまさらという感じかもしれないが……)。

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Miiや、Miiがしゃべる音声合成のソフトもよくできている。Wiiが発売されてから9年以上、ここまで蓄積された膨大なノウハウがこのMiiというアバターに突っ込まれているのだろうが、その辺は私は詳しくないので、詳しい人に解説してもらいたいところ。

*1:Twitterは例外で、3200件までしか追えないという制限がある

*2:文脈に露悪的に逆らったり、ビジネスとして承認よりも利潤を求めて投稿行動をする人もいるが、それは例外